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【シリーズ】軽度知的障害や発達障害がある生徒を対象とした自立活動(5)【自立活動の授業の実際②-自分の苦手なところ、得意なところをチェックしよう-】

このシリーズでは、軽度知的障害や発達障害がある生徒を対象とした自立活動について、A特別支援学校の取り組みを軸に紹介していきます。
※本記事の作成に当たり,A特別支援学校からの許可をいただいています。

今回は「自立活動の授業の実際」として、「自分の苦手なところ、得意なところをチェックしよう」の具体的な学習指導略案とチェック項目を紹介します。

授業形態

本来、自立活動は個別の指導を前提としていますが、A特別支援学校では集団での自立活動を主として実践を行っています。

集団で自立活動を行う理由
  • 他人の行動を見て自分を振り返ることができる生徒が多いため、集団での活動が有効である
  • 経験から学ぶという特性を踏まえ、意見交換や役割分担など集団で行うことでより効果が高まる
  • 生徒数に対する教職員数を考慮する必要がある
  • 軽度の知的障害の生徒を対象とした集団での自立活動の実践研究は、全国的にも少なく、特別支援学級や高等学校における通級による指導に役立つ

ただし、個別面談や理解の定着を図る場合は、指導体制を柔軟に変更しながら取り組んでいます。

その中でも1学年はクラス単位での授業を行っているそうです

クラス単位で授業を行う理由
  • 生徒一人一人の実態把握を担任がじっくりと行うことができる
  • 生徒と担任の信頼関係を構築する必要がある
  • クラスの所属意識を高めることができる

1年生は様々なゲーム活動を通して、個々の生徒の得意なことや苦手なことなどの実態を教師が把握したり生徒自身がそれに気づいたりできるように配慮するとともに、自立活動に対してマイナスのイメージを抱かせないような授業実践を行いました。

今回は実施した授業のうち、「自分の苦手なところ、得意なところをチェックしよう」の実践について紹介します。

実際の学習活動

実際の学習活動は以下のような流れで行われました。

学習活動の流れ
  1. 本時のテーマと内容を知る
  2. リラックスタイム(呼吸法や身体の動き)
  3. 本時の流れを聞く、傾聴のルール説明を聞く
  4. 自分の苦手なところ、得意なところをチェックする
  5. 活動の振り返り、自己評価を行う
  6. 次回の学習内容を知る

【自分の苦手なところ、得意なところをチェックする】では、パワーポイントを用いて、生徒たちが理解しやすいような項目の表現に変えて提示されました。

チェック項目

チェック項目は【自立活動の内容】の6区分をもとに、具体的に表現されていました。

領域チェック項目
健康の保持・生活のリズムや生活習慣がくずれやすい。
・着るものにこだわりがあって、暑くても寒くても同じものを着ている。
・とても偏食がある。
・整理整頓が難しい。

※てんかんや糖尿病などの持病がある場合。
・自分の病気についてよく知らない。
・病気があるが、薬を飲むことをしない。
・身体がきついけど、無理をしたりする。

※病気や事故の後遺症等がある場合。
・病気や事故で体が動かしにくいが気にしない。
・病気や事故で調子が悪いことがあるが気にしない。

・自分の得意なことや苦手なことを知らないために、生活することが大変だったり、人に頼めないことがある。

・運動は普段はしていない。
・偏った食事をしたり、食べる時間が決まっていない。
心理的な安定・イライラする。
・よく落ち込む。
・不安になる。
・緊張する。

・場所や場面が変わるとあわてたり、わけが分からなくなったりする。
・予定が変わると不安になったり、あわてたりする。

・苦手なことが分かっていて、それを改善・克服しようとは思わない。
人間関係の
形成
・人と話すことが嫌い、難しい。
・人と話すときにとても緊張してしゃべらない。

・相手の気持ちを考えずに発言する。
・嫌がっているのに、ちょっかいを出す。
・一方的に自分のことだけ話す。

・自分の得意なことを知らない。
・自分の苦手なことを知らない。
・自分の性格を知らない。
・他の人と合わせて行動することが難しい。
・一人で勝手にしてしまう。
・周りのことが見えなくなってしまう。

・ゲームなどでルールを聞いていないことがある。
・ルールは分かっているけど守れない。
・言い方が分からないので、話に参加しない。
環境の把握・見ることが難しい。とても見えにくい。
・聞くことが難しい。とても聞こえにくい。

・人が話をしているのがよく分からない。
・人と違うところで「いいな」と思ったり、「嫌だ」と思ったことがない。
・自分がどのような考え方をしているか分からない。
・何を話せばいいかわからない。
・文字を読んでいると、どこを読んでいるかわからない。
・集中して話を聞くことができない。
・漢字やひらがな、カタカナが覚えられない。
・何回やっても、なかなか覚えられない。
・考えても分からないことが多い。
・どこで判断したり、決めたりすることが分からない。
・これからのことを考えてもイメージがわかない。
・問題の解き方を考えるけど、なかなか出てこない。
・見た物や聞こえること、感じることに、ドキドキしたり、どうしていいかわからなくなってしまう。

※めがねやコンタクトレンズは除く
・補聴器や弱視レンズなどを使うこと。
・聴覚障がいのために手話を使うなど。

・視覚障がいの場合、白杖を使用して、情報を収集しながら歩くことができるか。
・聴覚障がいの場合、補聴器だけではなく、視覚や嗅覚なども活用して情報を収集できるか。

・これまで学習してきたこと、覚えたことを活用することが難しい。
身体の動き・座っていて、姿勢がくずれやすい。
・座っていると、ムズムズして動いてしまう。
・運動するときに、思ったように身体が動かない。
・スキップなどが難しい。

※装具や車いすを使っている場合
・装具(矯正靴など)や車いすが必要だが、使っていない。

・ボタンがうまくとめられない。
・服を脱いだり、たたんだりすることが難しい。
・はしがうまく持てない。
・字を書くときに、思うように字が書けない。
・文字がくずれてしまう。

・病気などがあり、長い距離を歩くことが難しいが、車いすなどは使っていない。

・作業で手先を使った細かい作業が難しい。
・こだわりがあって、指示通りにすることが難しい。
・いろんなことが気になったり、気がちったりして、集中することが難しい。
コミュニケーション・思ったことを伝えることが難しい。
・人の話を聞くことが難しい。

・人の話の内容がよく分からない。
・書いてあることを読んで理解することが難しい。
・人に伝えるときに、ことばが思いつかない。

・ことばをあまり知らない。
・物の名前を知らないことが多い。
・様子を表すことが難しい。
・自分がしていることを伝えることが難しい。

※普段使っているLINEなどは除く。
・やりとりが難しいときに、他の手段(筆談、ICT機器、カードなど)を使うことはない。

・自分が話している内容が分からなくなる。
・会話の方法や手順が分からない。
・相手に合わせた言葉遣いが分からない。

予め難しいと思われる項目や質問があった内容については、個々に回答すると同時に、周りにも具体的に伝えるという配慮がなされていました。

次回は…

次回の記事では「自立活動の授業の実際③-私は誰でしょうゲーム-」について紹介していきます。

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