このアプリを作った背景
書くことや、読むことに時間がかかったり、とても疲れたりする子どもがいます。そうした子どもにも、考えていることや、学びたいことはたくさんあります。手で書くかわりに話して文字にする、目で読むかわりに耳で聞く。同じ行き先に、別の道すじでたどり着く方法があります。このシリーズでは、それを「別のルート」と呼んでいます。
ただ、道具はあるだけでは役に立ちません。使い方を練習し、場面に合わせて自分で選び、「この方法ならできます」と周りに伝えられて、はじめて学びの支えになります。自分に合う使い方は、学齢期のうちから、ためしながら見つけていくことが大切です。
本吉研究室では、音声入力やフリック入力、音声ペン、音声認識による情報保障など、書くこと・読むことを支える方法について、学生のみなさんと研究を重ねてきました。その成果をもとに、子どもが自分で練習し、選び、伝えるためのアプリを10本作りました。どれも授業アプリライブラリから無料で使えます。インストールも登録もいりません。
読み・書きの困難サポートの特長
- 練習する・選ぶ・伝える・ふりかえる:道具の練習から、場面に合わせた選び方、配慮のお願い、先生の話し合いの記録、ふりかえりまでつながっています。
- こまり方から考える:診断名で分けず、「書くのがたいへん」「読むのがたいへん」という、こまり方から始めます。
- 自分の端末を知る:音声入力や読み上げの出し方は、iPad・Mac・Chromebook・Windows から、自分の端末をえらんで確かめます。
- 書いた内容は端末に残りません:入力したことはどこにも送りません。続きは「ファイルに保存」して、次に「ファイルを開く」で読みこみます。共用のタブレットでも使えます(ふりがな・読み上げの設定だけ、端末に残ります)。
- ふりがなと読み上げ:すべての漢字にふりがなを付けられます(子ども用は最初からふりがなあり)。読み上げは端末の中の声だけを使います。
- 名前を書かない作り:先生用のツールでは、子どもを記号(A・B…)で記録します。
- 印刷できます:記録や、白紙のシートを印刷できます。紙で使いたいときにも。
こんな流れで使えます
- 練習する:音声入力・フリック入力・プリントの撮影・読む道具を、自分の端末で練習します。(W1「音声入力のコツとタイムアタック」/W2「フリック入力の練習」/W3「プリントを撮影して答える練習」/W10「読む道具の使い方」)
- えらぶ:場面に合わせて、どの道具を使うかを自分で選び、理由を言えるようにします。(W4「この場面ではどの道具?」)
- 伝える:こまりごとから工夫とお願いを見つけ、先生にわたすカードと手紙にまとめます。(W5「こまりごとから工夫とお願いを見つける」/W6「学びやすさリクエストカード」)
- 話し合う:先生が、本人・保護者とテストの配慮を話し合って決め、記録し、見直します(W6 のカードを開いて使えます)。(W7「テストの配慮・話し合いの記録」)
- ふりかえる:使ってみた気持ちや手ごたえ、どんな場所・方法で学びたいかを記録し、前とくらべます。(W8「ふりかえりと学ぶ場の希望」)
授業では、W9「『聞く』を文字で:音声認識の工夫チェック」で、先生の話を字幕のように文字にするときの準備と練習ができます。先生が授業で使う文を入れて、本人と一緒に、ちがう字になる専門のことばを見つけることもできます。
アプリの一覧(10本)
W1音声入力のコツとタイムアタック子ども用手で書くかわりに、話して文字にする「音声入力」の練習です。自分の端末(iPad・Mac・Chromebook・Windows)をえらんで出し方を確かめ、うまく文字になる話し方のコツをクイズで覚えます。見本の文を音声入力で入れるタイムアタックでは、かかった時間と、ちがう字・ぬけを数えて自分で直します。記録は前とくらべられます。開く ➜W2フリック入力の練習子ども用フリック入力の練習です。向きと字のきまりを十字のシートで覚え、アプリの中のキーで指をすべらせて練習し、自分の端末のキーボードでタイムアタックに取り組みます。にごる音・小さい字・記号の入れ方つき。声を出しにくい場面の「別のルート」にもなります。十字シートを印刷できます。開く ➜W3プリントを撮影して答える練習子ども用プリントを写真にとり、答えを入力やペンで書きこむ方法の練習です。撮影→確かめる→名前をつける→書きこむ→画像で保存、の手順を、練習用プリント3枚で試せます。学校で使っているアプリ(ロイロノートなど)でも、同じ手順で使えます。開く ➜W4この場面ではどの道具?子ども用・先生や家の人と手書き・音声入力・フリック・撮影・読み上げなどの道具を、場面に合わせて自分で選ぶ練習です。12の場面カードで「見通す→えらぶ→理由を言う→やってみる→ふりかえる」をたどり、実際の授業や宿題での記録とあわせて「わたしの道具マップ」にまとめます。開く ➜W5こまりごとから工夫とお願いを見つける子ども用・先生や家の人と書くこと・読むことの「こまりごと」(6つの場面・26項目)をえらび、自分でできる工夫と、先生にお願いできること(授業のとき・テストの形・テストを受けるとき)を見つけて「わたしのリスト」にまとめます。W6 のカードづくりにつながります。開く ➜W6学びやすさリクエストカード子ども用・先生や家の人と学びやすくするための配慮を、自分から先生にお願いするカードと手紙を作ります。こまっている場面、「この方法ならできる」という自分の案、変えないでほしいことを、6つのステップで整理します。W5 のリストを開いて始められ、口で伝える練習もできます。開く ➜W7テストの配慮・話し合いの記録先生用書くこと・読むことに困難のある子どものテストの配慮を、本人・保護者と話し合って決め、記録し、見直し、引き継ぐためのツールです。18の配慮の例を「実施/ためしに/見送り」で記録し、配慮ごとに評価のねらいが変わらないかを確かめます。W6 のカードを開くと本人の申し出が入ります。経過の一覧・引き継ぎシート・白紙の話し合いシートつき。子どもは記号で記録します。開く ➜W8ふりかえりと学ぶ場の希望子ども用道具を使って学んだあとの気持ちや手ごたえ(毎回)と、どんな場所・方法で学びたいか(月に1回くらい)を、5つのだんかいでえらんで記録します。項目ごとのグラフで前とくらべられます。白紙のシートも印刷できます。開く ➜W9「聞く」を文字で:音声認識の工夫チェック先生と本人(中学生以上)話を音声認識で文字にして読むときの、誤変換を減らす工夫をまとめました。話す人の準備チェック(単語登録・マイク・表示など12項目)、授業の資料から登録することばを取り出す単語登録リスト、誤変換をためす練習、先生の文を本人が音声入力で読み、ちがう字になる専門のことばを一緒に見つけて登録し、もう一度ためす練習、本人が「聞く」ための方法を考えるページがあります。開く ➜W10読む道具の使い方子ども用・おうちの人と端末の読み上げ・音声ペン・音声つきの教材・見え方の調整など、読むための道具を知り、自分に合う使い方を見つけます。お話を使って、文字の大きさ・行の間・書体・背景の色・区切り・ふりがな・読み上げの速さを変えてみて、「わたしに合う読み方」にまとめ、印刷して先生に渡せます。家での始め方つき。開く ➜
先生・保護者の方へ
配慮は、本人の「こうすればできる」という声から始まります。アプリで作ったカードや記録は、そのまま話し合いの材料になります。ここにある工夫や配慮は例です。実際の配慮は、本人・保護者・学校の話し合いで決めてください。入試での配慮には、受験先ごとの手続きと時期があります。
使ってみた感想や、「ここが使いにくい」「こんな道具もほしい」といった声を、ぜひお寄せください。いただいた声をもとに、少しずつ直していきます。



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