
「毎日の授業の振り返り、もっと子どもたちの『考える力』を伸ばす時間に変えませんか?」
教育現場で日々奮闘されている先生方なら、一度はこう思ったことがあるかもしれません。紙の振り返りシートは、提出や管理が大変な上、一人ひとりに丁寧なコメントを返すのは時間的に難しい…。結果として、振り返りが形式的な作業になってしまうことも少なくありません。
そんなことを考えながらサイトをさまよっていたら、発見しました!
Difyを使ったアプリを公開している小学校の先生「ささ@小学校で働く」さんの記事を見つけました。めっちゃすごいです。日々の苦労から生まれた発想を形にした傑作!早速参考にさせていただきました。ありがとうございます。
このアプリのすごいところは、Googleスプレッドシートをデータベースとして活用し、サーバー契約なしで本格的なWebアプリケーションとして動作する点です。そして、入力された振り返りに対し、AIが一人ひとりの内容に合わせて、瞬時に個別フィードバックを返してくれます。
今回は「ささ@小学校で働く」さんの記事を参考に、ある小学校からのニーズに応じて本吉研究室がアレンジしたアプリに関する記事となります。
このアプリが子どもたちの学びと先生の働き方をどう変えるのか、その魅力的な機能と使い方、そして開発の裏側にある技術的なヒントまで、余すところなくご紹介します!
子どもたちの学びが変わる!学習ふりかえりアプリ「ふりカエル」でできること
「ふりカエル」は、子どもたちにとって「書くだけ」の作業ではなく、自分の考えを深め、対話が生まれる新しい学習体験を提供します。
1. かんたん・安心な自分だけの学習ノート
児童は、自分に割り当てられた出席番号とパスワードでログインします。自分だけの専用ページなので、他人に内容を見られる心配がありません。この安心感が、子どもたちが本音で自分の学びと向き合うための大切な第一歩となります。


2. ゴールが明確に!目標を意識したふりかえり
ふりかえりを入力する際は、まず**「教科」を選択。すると、その教科に紐づいた「単元目標」**がドロップダウンリストに表示されます。
「今回の単元では、どの目標を達成するために頑張ったかな?」と、子どもたちが学習のゴールを意識しながらふりかえりを書くことができる設計です。これにより、「楽しかった」だけで終わらない、学びの核心に迫る記述へと導きます。
※単元の目標はスプレッドシートに担当教師が事前に作成することになります。


3. 困ったときの頼れる味方!「ふりかえりのヒント」
「どう書けばいいか分からない…」そんな子のために、**「ふりかえりのヒントを見る」**ボタンを用意しました。
クリックすると、学習指導要領でも重視される「見方・考え方」を働かせるためのヒントや、振り返りを書くための視点が分かりやすくポップアップ表示されます。これにより、振り返りが苦手な子も、自分の言葉で思考を整理する手助けを得られます。


4. 書いたらすぐにAI先生からお返事!対話が生まれる即時フィードバック
このアプリ最大の特徴が、AIによる個別フィードバックです。
児童が振り返りを送信すると、AIがその内容を瞬時に解析。「単元目標」を意識できているか、どんな「見方・考え方」が働いているかを評価し、一人ひとりに合わせた温かいコメントと、次の学びを促す質問を返してくれます。
「先生が自分のことを見てくれている」という実感は、子どもたちの自己肯定感を高め、学習へのモチベーションを飛躍的に向上させます。

先生の働き方も変わる!驚くほど楽になるデータ活用術
このアプリは、子どもたちの学びを支援するだけでなく、先生の業務を劇的に効率化します。
1. すべての記録がスプレッドシートに自動集約
児童が入力したすべてのデータ(教科、単元目標、振り返り内容、感情タグ、AIコメント)は、リアルタイムでGoogleスプレッドシートに自動で蓄積されます。紙を集めて管理する手間は、もう必要ありません。
2. 個別の学びを深く理解し、指導改善へ
スプレッドシートを開けば、クラス全員の学びの記録が一目瞭然です。フィルタ機能を使えば、特定の児童の記録だけを時系列で追ったり、特定の単元目標に対するクラス全体の理解度を分析したりすることが容易になります。
「Aさんはこの単元で表現力が伸びたな」「クラス全体でこの目標の理解が浅いから、次の授業で補足しよう」といった、データに基づいた指導改善が可能になります。


【技術者向け】GASとWebアプリの魔法!このアプリの裏側を大公開
このアプリは、特別なサーバーや高価な開発環境なしで、すべてGoogleのサービス上で構築されています。ここでは、その技術的なカラクリを少しだけご紹介します。
なぜGAS (Google Apps Script) なのか?
最大の魅力は、サーバーレスであることです。Googleアカウントさえあれば無料で開発を始められ、作成したWebアプリはGoogleの強力なインフラ上で動作します。スプレッドシートをデータベースとして直接読み書きできるため、複雑なデータベース設定も不要。まさに「教育現場のための最速DXツール」と言えるでしょう。
フロントとサーバーの架け橋 google.script.run
このアプリの心臓部とも言えるのが、google.script.runという命令です。これは、ユーザーが見ているWebページ(HTML/JavaScript)から、裏側で動いているGASの関数を呼び出すための「魔法の呪文」です。
例えば、ユーザーが「送信」ボタンを押すと、google.script.run.saveReview(…)のようにして、スプレッドシートにデータを書き込むGAS関数を呼び出します。この非同期通信のおかげで、ページを再読み込みすることなく、スムーズな操作感を実現しています。
外部AIとの連携 UrlFetchApp とプロンプトエンジニアリング
AIコメントは、GASのUrlFetchAppという機能を使って、外部のAI API(今回はDifyを利用)を呼び出すことで実現しています。
しかし、ただ「コメントして」とお願いするだけでは、ありきたりな回答しか返ってきません。AIの性能を最大限に引き出す秘訣は、プロンプトエンジニアリングにあります。
今回のアプリでは、AIに対して以下のような詳細な指示を与えています。
あなたは、児童一人ひとりの学びを丁寧に見守る、心優しい小学校の先生です。
- 目標達成度の評価: 「単元目標」を意識しているかを評価してください。
- 「見方・考え方」の評価: 目標に含まれる「見方・考え方」を働かせているかを評価してください。
- 具体的な賞賛: その子ならではの素晴らしい点を具体的に見つけて褒めてください。
- 学びを深める質問: 次の学習に意欲を持てるような、簡単な質問を投げかけてください。
- 言葉遣い: 小学生に語りかけるような、前向きで温かい言葉を選んでください。
このように、AIに「役割」を与え、「ルール」と「手順」を明確に指示することで、まるで経験豊かな先生が書いたような、質の高い個別フィードバックを安定して生成させているのです。
まとめ
今回ご紹介した学習ふりかえりアプリ「ふりカエル」は、テクノロジーの力で「個別最適な学び」と「教師の業務効率化」を両立させる可能性を秘めたツールです。子どもたちが自分の学びの主人公となり、先生がより創造的な指導に時間を使えるようになる。そんな未来への第一歩になればと願っています。
教育現場の課題は、意外と身近なツールと少しのアイデアで解決できるかもしれません。この記事が、皆さんの新しい挑戦のきっかけになれば幸いです。運用したい場合はお問い合わせください。
「ささ@小学校で働く」さん、ありがとうございました!
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