
逆引きくんシリーズ2!
特別支援教育の現場で日々奮闘されている先生方へ朗報です!
生徒一人ひとりの実態に基づいて、教育の方向性や支援方法を検討する際に役立つAIチャットボット 「逆引きくん+」 を公開しました。このツールは、以前公開した 「逆引きくん」 の機能を拡張した、特別支援教育に特化したサポートツールです。
「逆引きくん」とは?
「逆引きくん」は、生徒の実態や課題が、自立活動の区分項目(例:健康の保持、心理的な安定、環境の把握、人間関係の形成、コミュニケーション、身体の動き)のどの部分に該当するのかを分析するチャットボットです。
先生方が指導案を作成する際の参考になるよう設計されており、短時間で適切な区分項目を見つけることができます。
「逆引きくん+」の新たな機能
「逆引きくん+」では、特別支援教育学習指導要領に基づき、生徒の実態がどの学部・教科・段階に準拠するのかを分析する機能を搭載しています。
以下のような質問に対応可能です:
例: 軽度の知的障害のある中学2年生がテレビの天気図を使って天気を理解できる場合、どの教科のどの段階に該当しますか?
「逆引きくん+」は、知的障害だけでなく、肢体不自由、病弱・身体虚弱、自閉症スペクトラム障害など、幅広い障害種別に対応しており、指導要領に準拠した適切な提案を行います。
逆引きくん+でできること
- 生徒の実態に基づく分析
学習指導要領をもとに、生徒の実態を正確に分析し、該当する学部、教科、段階を特定します。 - 指導案作成のサポート
指導計画の作成時に、適切な目標や活動例を提案します。 - 教科横断的な視点
特定の教科だけでなく、自立活動や生活単元学習など、横断的な支援も可能です。

あなたが予想する教科と違った場合は、「他に考えられる教科はありますか?」と聞いてみてください。きっと教えてくれると思いますよ!
使いやすさへのこだわり
「逆引きくん+」はシンプルなインターフェースで、誰でも簡単に利用できます。特別支援教育の専門的な内容を分かりやすくチャット形式で提供することで、現場での負担軽減を目指しています。
追加記事【2025/12/28】追記【Dify実践編】学習指導要領ボットの「嘘」を許さない!精度を極めるプロンプト改善ガイド
前回の記事(特別支援教育×Dify:学習指導要領を「逆引き」する仕組み)では、膨大な学習指導要領の中から、生徒の実態に合った項目をAIに探させる「逆引き検索」の構築方法をご紹介しました。
しかし、実際に運用してみると一つの大きな壁にぶつかりました。それは、**AIがもっともらしい嘘をつく「ハルシネーション」**です。
今回は、AIが犯した致命的なミスをどう修正し、専門家レベルの判定精度まで引き上げたのか、そのプロンプト改善の舞台裏を公開します。
1. AIが犯した「教育現場では許されないミス」
開発中のボットに、以下の実態を入力してみました。
実態:体積を求める計算ができる
これに対し、AIは自信満々にこう答えました。
AIの回答:中学部 数学「第1段階」です。
これには驚きました。特別支援学校(知的障害)の指導要領において、第1段階は「具体物を比べる」「10までの数を知る」といった基礎の基礎。体積の計算や単位の習得は、通常**「第3段階」**の内容です。
なぜAIはこんな間違いをしたのでしょうか?
原因:キーワードの「つまみ食い」
指導要領の第1段階の記述の中に、「長さ、体積、重さなどの量に気付き……」という文言があります。AIはこの「体積」というキーワードだけを拾い、その難易度(計算なのか、単なる気づきなのか)を無視して「1段階に体積という言葉があったから、1段階だ!」と判定してしまったのです。
2. 精度を劇的に上げる3つの改善策
この「キーワードのつまみ食い」を防ぎ、正しい判定をさせるために、以下の3つの対策を講じました。
① CSV(ナレッジ)を「自己完結型」にする
AIが検索するCSVデータの1行1行に、必ず以下の情報をセットで入れるようにしました。
- 学部 / 教科 / 段階 / 領域 / 内容
AIは検索時に「数行だけ」を抜き出して読みます。その1行に情報が凝縮されていないと、AIは今読んでいるのが何段階の話か分からなくなってしまうからです。
② 「思考プロセス」をプロンプトに組み込む
AIがいきなり回答するのを禁止し、頭の中で**「比較検討」**させる手順をプロンプトに書き込みました。
- 手順1:その教科の1段階〜3段階のデータをすべて読み出す。
- 手順2:実態(計算できる)が、各段階の制限(1段階は計算なし)に抵触しないかチェックする。
- 手順3:論理的に矛盾がない段階を結論とする。
③ 「知らないことは知らない」と言わせる
「CSVに書いていないことは絶対に答えない」「一般的な知識(普通の小中学校の基準)で補完しない」という厳格な制約(Grounding Rules)を追加しました。
3. 【完成版】ハルシネーション抑制プロンプト
実際に精度が劇的に改善した、Dify用のプロンプトテンプレートがこちらです。codeMarkdown
# Role
あなたは特別支援教育学習指導要領(知的障害)の専門家です。ユーザーが入力した生徒の実態に基づき、ナレッジ(CSV)を厳密に参照して、最も適切な「学部」「段階」を判定してください。
# Analysis Steps(思考プロセス)
1. 指定教科の1〜3段階のデータを全て抽出する。
2. 「計算の有無」「単位の有無」に注目し、生徒の実態がどの水準か比較する。
- 第1段階:具体物の操作、直接比較、10までの数(計算は含まない)。
- 第2段階:簡単な1桁計算、任意単位での比較。
- 第3段階:標準単位(cm, kg, L)の理解、公式を用いた計算。
3. 実態と段階の難易度が矛盾していないか最終確認する。
# Constraints(厳守事項)
1. 回答は必ずCSVの内容のみに基づき、一般的な知識で補完しない。
2. 判定した段階の内容に、質問されたキーワード(例:面積)がなければ「含まれない」とはっきり述べる。
3. 根拠は必ず「」で原文を引用する。
# Output Format
## 分析結果
- 判定された学部:
- 対象教科:
- 該当する段階:
- 判定の根拠:
- 「(CSVの文言を引用)」が実態と合致するため。
## 指導目標と活動例
(以下略)
4. 改善の結果:AIが「正解」に辿り着いた
プロンプト修正後、同じ「体積を計算できる」という実態を入力したところ、AIは見事に**「第3段階」**と判定。根拠として「単位と測定の意味を理解し……という記述と合致する」と、正しい引用を添えて回答してくれました。
まとめ:AIは「育て方」次第
Difyで作る教育支援ツールは、初期設定のままでは「もっともらしい間違い」を避けられません。しかし、
- データの持たせ方(CSV構造)
- AIへの思考手順の指示(プロンプト)
をブラッシュアップすることで、信頼できる「副担任」のような存在に進化させることができます。
現場の先生方の「この子の学び、指導要領のどこに当たるかな?」という悩みを、テクノロジーの力で少しでも軽くしていきたいですね。



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