
― 現場を疲弊させない「自律型AIナレッジベース」の構築に向けて ―
2026年、生成AIは学校現場において「あれば便利な道具」から「なくてはならないインフラ」へと進化しました。特にGoogleのNotebookLMやGemsは、校務マニュアルや指導案などの膨大な知見を即座に引き出せる強力な武器です。
しかし、これらを組織として導入するには、技術的な設定以上に「運用設計」が成否を分けます。本記事では、自前のWorkspace運用と外部サービスを使い分ける「ハイブリッド戦略」について解説します。
第1部:校内での「高度な秘匿性・独自性」を守るGoogle Workspace運用
学校独自の深いノウハウや、外部に出すべきではない秘匿性の高い情報を扱う場合は、Google Workspace内でのクローズドな運用が適しています。
1. 「管理用アカウント」による情報の隔離
- 秘匿性の高い情報の格納: 校内限定の服務規程の詳細、未発表の行事計画、教職員間のナレッジ共有など、外部プラットフォームにアップロードすることに抵抗があるデータは、学校ドメイン内の「管理用アカウント」が所有するNotebookLMで管理します。
- 権限の最小化: 編集権限はICT主任や特定の分掌主任など、最小限の「個人アカウント」にのみ付与し、情報の変更履歴を厳格に管理します。
2. 独自プロンプトによる「学校文化」の継承
- 独自の教育方針の反映: 学校独自の教育目標や校訓を色濃く反映させた指導案の作成補助など、カスタマイズ性が極めて高い「内製Gem」を構築することで、学校のアイデンティティをAIに反映させることが可能です。
3. 【直面する限界】「手動管理」のコストと専門性
- 運用の重荷: この運用は安全ですが、ソースの差し替えや回答の精度チェックなど、すべてのメンテナンスを校内の担当者が「手動」で行う必要があります。高度な専門スキルを持つ教員の善意に依存するため、全校規模の汎用的な利用に広げようとすると、担当者がパンクするリスクを孕んでいます。
第2部:外部サービス「学校DX化でわくわくをサポート」等による「利便性と即戦力」の確保
全職員が日常的に使い、かつ標準的な教育ニーズに応えるものについては、「学校DX化でわくわくをサポート」のような専門プラットフォームを「窓口」として活用するのが最適と考えます。
1. 「構築済みツール」による導入初日からの効率化
- 専門Webアプリとしての機能: DLA評価サポート、テスト問題作成、SNSマスタートレーニングなど、あらかじめプロの手で調整されたツールをすぐに利用できます。自前でNotebookLMを設定し、プロンプトを試行錯誤する「構築の苦労」を一切スキップできます。
- 保守・管理の外部化: AIを正しく動かし続けるためのメンテナンス(プロンプトの更新やシステムの安定性確保)はサービス側が行うため、校内のICT担当者は「使い方の助言」という本来の役割に専念できます。
2. 利用ログの分析とPDCA
- DXの可視化: どの部署がどの程度活用しているかを数値で把握できるため、形骸化を防ぎ、組織的な業務改善の根拠を得ることができます。
結論:セキュリティと効率を両立する「ハイブリッド戦略」
私たちが考える学校DX化は、「情報の重要度」に応じてツールを使い分けるハイブリッド運用が最適解になると考えています。
| 情報の性質 | 活用ツール | 運用のポイント |
|---|---|---|
| 高度な秘匿性・専門性 | 校内管理アカウント(NotebookLM等) | セキュリティ優先。少数の専門家でメンテナンスを行う。 |
| 汎用業務・利便性優先 | 外部チャットボットサービス(わくわく等) | 効率優先。全職員が使いやすいUIと完成された機能を利用する。 |
学校が選ぶべき道
DXの本質は「新しい仕事」を増やすことではなく、**「今の仕事を楽にすること」**です。
- フェーズ1: 外部サービスを導入し、まずは全職員が「AIの便利さ」を体感し、日常的な校務の負担を軽減する。
- フェーズ2: 特に入力に慎重を期す情報や、学校独自の深いナレッジについてのみ、校内の専用アカウントでNotebookLM等を構築し、厳重に管理・運用する。
自前での「環境構築」に固執しすぎて現場が疲弊するのを避け、完成された「サービス」を賢く組み合わせて活用することこそが、持続可能な学校DXを実現するための方法であると思います。
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