
はじめに
近年、日本の学校には様々な国籍を持つ生徒たちが通学しています。多文化共生が進む中で、先生方と生徒・保護者間の円滑なコミュニケーションは、子どもたちの学びと成長を支える上で欠かせません。しかし、言葉の壁が情報伝達の障壁となることも少なくありません。
そこで今回は、Googleスプレッドシートを最大限に活用し、多国籍の生徒や保護者へ向けた連絡をよりスムーズに行うための「多言語連絡シート」の作成方法をご紹介します。これは、日々の連絡だけでなく、いざという時の情報共有にも役立つ強力なツールです。
なぜ学校で多言語連絡シートが必要なのか?
文化や言語の異なる家庭への連絡は、時に先生方にとって大きな負担となることがあります。宿題の連絡、学校行事のお知らせ、持ち物の連絡、緊急時の対応など、子どもたちに関わる重要な情報を正確に伝えることは、保護者の安心にもつながります。多言語対応の連絡シートがあれば、以下のようなメリットがあります。
- 情報格差の解消: 日本語が苦手な生徒や保護者も、母語や使い慣れた言語で情報を得られます。
- 先生方の負担軽減: 一度テンプレートを作成すれば、連絡事項のたびに翻訳ツールを開く手間を省けます。
- 迅速な情報共有: 情報を入力するだけで瞬時に翻訳が反映され、素早い情報発信が可能になります。
- インクルーシブな環境作り: 学校全体で多文化理解を促進し、全ての生徒・保護者が安心して学校生活を送れる環境をサポートします。
Googleスプレッドシートで作るメリット
学校で多言語連絡シートを運用する上で、Googleスプレッドシートは非常に優れたツールです。
- 無料で利用可能: Googleアカウントがあれば、追加費用なしで誰でも簡単に利用を開始できます。
- 共有・共同編集が容易: 保護者向けに閲覧専用で共有したり、複数の先生方で情報を入力・管理したりと、運用形態に合わせて柔軟に設定できます。
- どこからでもアクセス可能: インターネット環境があれば、学校のPCからでも、ご家庭のスマートフォンやタブレットからでも、場所を選ばずにアクセスできます。
- Google翻訳関数が使える: これが最大の利点!GOOGLETRANSLATE関数を使えば、日本語で入力した内容を自動で多言語に翻訳し、常に最新の情報を多言語で表示できます。
多言語連絡シートの作成方法
1. 新しいスプレッドシートの作成
Googleドライブから新しいスプレッドシートを作成し、「多言語連絡シート(〇〇小学校)」といった分かりやすい名前を付けましょう。
2. 日本語で連絡事項を入力する列の用意
A列を「日本語」とし、ここに先生方が伝えたい連絡事項を日本語で入力します。
例:
- 今日の宿題は漢字ドリルです。
- 明日は運動会です。
- 体育の授業があります。体操服を忘れないでください。
- 来週の月曜日は遠足です。お弁当と水筒を持参してください。
- 明日の給食はカレーライスです。
- 明後日は個人面談週間です。
- 今日は全校で避難訓練を行います。
3. 翻訳したい言語の列を準備
B列以降に、学校に在籍する生徒の主要な母語となる言語の列を設けます。画像例のように、英語、中国語、ベトナム語、フィリピン語、ネパール語などが考えられます。各列の1行目には、言語名を分かりやすく記載しましょう。
4. GOOGLETRANSLATE関数で自動翻訳を設定
このシートの核となる部分です。
例えば、B2セル(英語)にA2セル(日本語)の内容を翻訳して表示させたい場合、B2セルに以下の関数を入力します。
=IF(A2=””, “”, GOOGLETRANSLATE(A2, “ja”, “en”))
- IF(A2=””, “”, …): A2セルが空欄の場合、B2セルも空欄にするための式です。
- GOOGLETRANSLATE(A2, “ja”, “en”): A2セルの日本語(”ja”)を英語(”en”)に翻訳します。
同様に、中国語(C列)なら “zh”, ベトナム語(D列)なら “vi”, フィリピン語(E列)なら “tl”, ネパール語(F列)なら “ne” といったように、各言語のISO 639-1コード(またはISO 639-3コード)を設定します。
一度関数を設定したら、B2セルの右下にある小さな四角をドラッグして、必要な行までコピーするだけです。これにより、A列に日本語を入力するだけで、自動的に他の言語に翻訳されたメッセージが瞬時に表示されるようになります。

学校での主な活用シーン
- 日々の連絡帳代わり: 宿題、持ち物、授業内容の変更など、日々の連絡事項を多言語でスムーズに伝えます。
- 学校行事のお知らせ: 運動会、文化祭、授業参観、個人面談などのイベント情報を事前に多言語で提供します。
- 給食メニューの案内: 献立やアレルギー情報を多言語で共有し、保護者の安心につなげます。
- 学級通信・週報: クラスの出来事や活動報告を、多言語で保護者と共有できます。
- 持ち物リストの共有: 修学旅行や遠足などの際に必要な持ち物を、分かりやすく多言語でリストアップできます。
その他の活用例(緊急時・災害時など)
- 災害時の緊急連絡: 地震や台風などの災害発生時、避難場所、安否確認方法、今後の学校の対応などを多言語で迅速に発信できます。
- 不審者情報や緊急避難訓練の告知: 安全に関わる重要な情報を、全ての生徒・保護者に確実に伝えます。
- 学校閉鎖・休校の案内: インフルエンザなどの感染症流行時や悪天候時の休校情報を多言語で周知します。
運用上のポイントと先生方へのアドバイス
- 簡潔な日本語を心がける: 自動翻訳の精度は、元の文章に左右されます。専門用語を避け、できるだけ簡潔で分かりやすい日本語で入力しましょう。
- 定期的な更新と周知: シートは常に最新の状態に保ち、保護者や生徒にシートの存在とアクセス方法を周知しておくことが重要です。QRコードを作成し、連絡網や学級通信に掲載するのも効果的です。
- 共有設定の確認: 保護者には「閲覧者」権限で共有し、誤って内容が変更されることを防ぎましょう。先生方で共同編集する場合は「編集者」権限を設定します。
- 限定的な利用を理解する: GOOGLETRANSLATE関数は非常に便利ですが、完璧な翻訳ではありません。特に専門的・感情的なニュアンスが必要な場合は、個別のフォローアップも検討しましょう。
まとめ
Googleスプレッドシートを活用した多言語連絡シートは、学校における多様な生徒・保護者とのコミュニケーションを大きくサポートするツールです。日々の連絡をスムーズにし、緊急時にも役立つこのシートをぜひ導入し、よりインクルーシブで安心できる学校環境の実現にお役立てください。
※Pro会員の方はこのシートをダウンロードすることができます。




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