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【解説】政府のAI「源内」にAIエージェントが登場 職員6,439人アンケートの結果と、学校・教育の動き

政府のAI「源内」にAIエージェント。18万人の職員へ。職員アンケートで満足71.7%

政府の職員が仕事で使う生成AI「ガバメントAI 源内(げんない)」に、この秋、大きな動きが2つありました。

1つは、10月20日に始まった「AIエージェント」の導入です。もう1つは、10月30日に公表された、職員6,439人への利用状況アンケートの結果です。

「源内って何?」という方もいらっしゃると思います。この記事では、源内とはどんなものかから始めて、2つの動きの中身と、これからの方向性、そして学校・教育の分野での動きを、できるだけやさしい言葉でまとめます。

この記事の要点
① 源内は、デジタル庁が自分たちで作った政府職員向けの生成AIの仕組みです。今年度、全府省庁の約18万人を対象に試しています
② 10月20日から、一度の指示で複数の作業をまとめて進める「AIエージェント」が使えるようになりました。あわせて、安全に使うための決まり「源内基準」も公表されました
③ アンケートでは、週1回以上使う職員の71.7%が「満足」、利用者の54.4%が「週1時間以上の短縮」を実感。一方で約3割はほとんど使っていないことも分かりました
④ 学校では、文部科学省が生成AIガイドラインを今年度中に改定する予定です。来年度の予算要求でも、学校のAI活用の環境づくりに大きな額が盛り込まれています


1. そもそも「源内」とは?

源内は、国の役所で働く職員が、仕事のために使う生成AIの仕組みです。デジタル庁が2025年度に自分たちで開発しました。ChatGPT や Gemini のようなAIを、政府の職員が安全に使えるように用意した「職員専用のAIの部屋」のようなものだと考えると、分かりやすいと思います。

  • 何ができるか:文章の下書き・要約・翻訳などのほか、法令の調査、国会での答弁の調査、補助金制度の調査、公用文の校正といった、役所の仕事に合わせたAIアプリが用意されています
  • どこまで広がっているか:2026年5月28日から、全府省庁の約18万人を対象にした大規模な試行(「実証」といいます)が始まりました。5月29日の時点で約10万人が使える状態になり、6月以降は文部科学省などにも広げる計画が示されていました。試行は2027年3月まで続ける予定です
  • 外にも公開:2026年4月には、源内の仕組みの一部が、だれでも無償で使える「オープンソース」として公開されました。自治体や民間の会社も、同じような仕組みを自分たちで作れるようにするためです

今年7月に閣議決定された国の「人工知能基本計画」でも、源内は「政府自らがAIを積極的に使う」取組の中心に位置づけられています。


2. 新しい動き① 「AIエージェント」が使えるようになりました(10月20日)

AIエージェントとは

これまでの生成AIは、「質問すると答えが返ってくる」一問一答のやり取りが中心でした。AIエージェントは、一度の指示で、調べる・まとめる・ファイルを作る・確かめるといった複数の作業を、AIが順番に自分で進めてくれるものです。

学校の仕事でたとえると、「この資料を読んで要点をまとめて」と1つずつ頼むのではなく、「この3つの資料を読み比べて、違いを表にして、保護者向けのお知らせの下書きまで作って」とまとめて任せられるイメージです。

源内に入った3つのしくみ

しくみどんなものか時期
エージェントチャットいつものチャットの発展形。ふだんの言葉で指示するだけで、複数の作業をまとめて進め、結果をファイルや文書で出してくれる10月20日から各府省庁へ順に導入
源内工房より高度なAIエージェントの環境。たくさんのWebサイトを読み比べて調べたり、実際に動く試作品(アプリ)を作ったりできる12月頃までの導入を目指す
源内ライブラリ職員が作った「スキル」を、省庁をこえて共有するしくみ今年度中に提供予定

ここでいう「スキル」とは、これまで一人ひとりの職員の頭の中にあった仕事の手順や判断の基準、確認のしかたを、AIエージェントが実行できる形に書き出したものです。デジタル庁は、ベテランの「暗黙知」を、同僚や後任、ほかの省庁の職員も使える「形式知」「集合知」に変えていく、と説明しています。

デジタル庁によれば、こうした高度なAIエージェントの環境を、専門の職員だけでなく一般の職員が日常の仕事で使える基盤として約18万人規模で導入するのは「世界初の試み」だということです。

安全に使うための決まり「源内基準」

AIエージェントは、できることが広い分、間違った情報を広げたり、ファイルを誤って消したりするおそれもあります。そこでデジタル庁は、10月20日に「源内基準」(ガバナンス・セキュリティ・セーフティに関する基準)を公表しました。

  • 「利用者」「管理者」「開発者」それぞれの立場で、守ることと責任をはっきりさせています
  • 報道によれば、ファイルの更新や削除など影響の大きい処理の前には、人が画面で確認・承認することを求め、出来上がった文書の最終的な事実確認は利用者が責任を持つ、としています
  • AIの安全性の評価を担う国の機関「AIセーフティ・インスティテュート(AISI)」の協力を得て作られました

また、エージェントチャットと源内工房は、だれでも使える「源内OSS Ver.2.0」として、2027年2月頃に公開される予定です。自治体や民間でも使えるようにするためです。


3. 新しい動き② 職員6,439人のアンケート結果(10月30日)

デジタル庁は、源内を使える職員を対象に、初めての利用状況アンケートを行いました(2026年8月21日〜9月18日、ウェブで実施)。回答は6,439人(本省・本庁2,467人、地方の出先機関3,972人)です。

どのくらい使われているか

使う頻度割合
ほぼ毎日10.4%
週3〜4回11.0%
週1〜2回26.4%
ほとんど使っていない26.2%
登録はしたが、まったく使っていない5.0%
登録していない21.0%

週1回以上使う人は47.8%、ほとんど・まったく使っていない人は31.2%でした。

使っている人の満足度と効果

  • 満足度:週1回以上使う職員(3,078人)のうち、71.7%が「満足」(とても満足16.0%、やや満足55.7%)と答えました
  • 時間の短縮:源内を取り入れた仕事で、54.4%が「1週間あたり1時間以上短くなった」と答えました。デジタル庁は、1人あたり週約1.83時間(約110分)の短縮と推計しています
  • よかったこと(多い順):「たたき台・下書きを素早く作れるようになり、ゼロから考える負担が減った」「経験の少ない分野でも、専門知識を早く身につけられるようになった」「これまで読み切れなかった大量の文書から、必要な情報を取り出せるようになった」

自由記述には、「子育て中で時間に制約があっても、家庭を犠牲にせずに働けている」「浮いた時間で、課や係の業務改善を考える余裕が生まれた」「外注して半年から1年かかっていたガイドライン作りを、職員だけで3か月ほどで仕上げられた」といった声がありました。

見えてきた課題

  • 使っていて困ったこと:「回答の精度・信頼性が低い場面があった」「AIの出力をそのまま使えず、直すのに手間がかかった」など
  • 使わない理由:いちばん多いのは「使い方がわからない」。次いで「ほかのAIサービスをいつも使っている」「業務で使う必要性を感じない」
  • ほしい支援:あまり使っていない職員は「基本的な使い方の研修」、よく使う職員は「活用事例集」や「プロンプト(指示文)の書き方ガイド」を求めていました

デジタル庁は、「AIを使える職員と使わない職員の間で、成果に差が出るおそれ」や、「AIを使えない職員の仕事が、使える職員に回ってきて仕事が増える」という声にも触れています。そのうえで、AIの出力に追われて負担が増えるのは本末転倒だとして、「AIに振り回されない働き方」を大切にする方針を示しました。第2回のアンケートは2027年1月頃に行い、AIエージェントの導入でどう変わったかを確かめる予定です。


4. これからの方向性(考察)

ここからは、公表された資料をもとにした、わくわくサイトとしての考察です。

「答えてくれるAI」から「仕事を任せるAI」へ

源内は、チャットや決まった型のAIアプリから、AIエージェントへと一歩進みました。アンケートで多かった「精度」や「ファイルの扱い」への不満にも、エージェントで応えるとしています。政府は、2026年度の試行の成果を確かめたうえで、2027年度以降の本格的な利用を検討するとしています。AIを「たまに相談する相手」から「仕事の一部を任せる同僚」として使う流れは、これからさらに強まりそうです。

一人の工夫を、組織の財産にする

「スキル」と「源内ライブラリ」の考え方は、学校にもそのまま当てはまります。学校でも、行事の段取り、通知表の所見の確認、個別の指導計画の書き方など、ベテランの先生の頭の中にある手順は多く、異動のたびに引き継ぎが課題になります。仕事の手順を言葉にして書き出し、共有するという発想は、AIを使うかどうかに関わらず、学校の働き方を考えるヒントになりそうです。

「使う人」と「使わない人」の差にどう向き合うか

使っている人の満足度は高い一方で、約3割はほとんど使っていません。理由のいちばんは「使い方がわからない」でした。これは学校でもよく聞く声です。道具を配るだけでは広がらず、基本の研修と、身近な人の使い方の例が大切だということが、数字でも示されたといえます。

「最後は人が確かめる」決まりを先に作る

源内基準は、AIができることが広がるほど、人が確認・承認する場面と責任の所在を先に決めておく必要があることを示しています。学校で子どもの情報や成績を扱う場面を考えると、とても大切な視点です。

自治体、そして学校へ届く可能性

2027年2月頃に公開予定の源内OSS Ver.2.0は、自治体での活用も想定しています。教育委員会も自治体の一部ですから、将来、同じような仕組みが教育委員会や学校の環境に入ってくる可能性はあります。ただし、今のところ源内そのものは国の職員向けで、学校の先生が使えるものではありません。民間の会社が「源内をもとにした教員向け版」などを案内している例もありますが、デジタル庁や文部科学省が公式に提供しているものではない点に注意が必要です。


5. 教育分野の動き

学校の生成AIについては、文部科学省の中央教育審議会(デジタル学習基盤特別委員会)で議論が進んでいます。10月1日の第11回会議の資料から、主な点をまとめます。なお、読んだ範囲の文部科学省の資料には、源内についての記述は見当たりませんでした。

生成AIガイドラインを、今年度中に改定へ

  • 「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」(現在は2024年12月のVer.2.0)を、学習指導要領の改訂を待たずに、今年度中に改定する予定です(Ver.2.1)
  • 改定では、エージェントAIなどの技術の動きや、リスクに関する研究・国際的な議論を反映するとしています
  • AIで効率化できる仕事と、先生自身が判断すべきことを、より具体的に示す方向です
  • 学習の場面では、AIの答えを写すだけで学びにつながらない「学習過程のショートカット」への対応や、効果的な使い方とそうでない使い方の両方の例を示すことが検討されています

資料では、学校現場の課題として、学校が管理していないAIや私物の端末での利用(いわゆる「シャドーAI」)、「学習に使われない設定にすれば個人情報を入れても大丈夫」という誤解、AIで作ったものの、目的のはっきりしない資料が増えて、管理職の確認の手間がかえって増えている、といった指摘も挙げられています。

学校のAI活用の現状

  • 半数以上の教職員がAIを使っている学校は17%。そのうち99%が「働き方改革に効果があった」と実感しています(2025年度の校務DXのチェックリストより)
  • 一方、教職員のAIの利用は、国際的な調査(OECDのTALIS 2024)で55か国中54位と低い位置にあります
  • クラウドを前提にした「次世代の校務DX環境」の整備率は14.4%にとどまり、校務でAIを使える学校はまだ限られています

来年度に向けて:大きな予算要求と手引き

  • 文部科学省の2027年度の概算要求では、「学校現場における安全かつ主体的なAI活用環境整備」に884億円(前年度は4億円)が盛り込まれました。内訳は、全国の教職員向け研修とリスク調査5億円、教育分野に特化したAIアプリの実証研究9億円、学習指導要領や指導案などのデータ整備92億円、AIを使うためのクラウド環境の整備778億円です(いずれも要求の段階です)
  • 今年度中に、教育委員会向けの校務での生成AIの利活用についての「手引き」をまとめる予定です
  • 「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」も改訂され、2027年3月に公表される予定です

政府の源内が「職員がAIを使いこなす」方向に進む一方で、学校では「安全に使える環境を整え、使い方の決まりを分かりやすくする」段階にあるといえます。進む速さは違いますが、研修と事例の共有、人が最後に確かめること、個人情報を守ることという大切な点は共通しています。


6. 学校で今日からできること

  • たたき台づくりから試す:源内でもいちばん効果があったのは「下書きを早く作れること」でした。お便りや会議資料の下書きなど、最後に自分で直す前提の仕事から始めるのがおすすめです
  • うまくいった使い方を校内で共有する:「使い方がわからない」が最大の壁です。指示文(プロンプト)の例を、校内で見せ合うだけでも広がります
  • 最後は人が確かめる:AIの答えには間違いがあります。事実や数字は、必ず元の資料で確かめましょう
  • 個人情報・機密情報は入れない:子どもや保護者の名前、成績などは、学校や自治体の決まりで認められた環境以外には入力しないでください
  • 仕事が一部の人に偏らないようにする:AIを使える先生に仕事が集まらないよう、校内で使い方を学び合うことが大切です

7. おわりに

政府の職員約18万人が、AIエージェントという新しい道具を使い始めました。アンケートからは、効果を感じている人が多い一方で、使い方が分からずに立ち止まっている人も多いことが分かりました。これは、学校で生成AIを広げていくときの姿と、よく似ています。

文部科学省のガイドラインの改定や手引きが出たら、わくわくサイトでもあらためてご紹介します。


引用資料


わくわくサイト|本吉研究室
お問い合わせは、サイト内のフォームよりお願いいたします。

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